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導入事例の作り方 — 何を聞き、どう構成し、どこに載せるか
導入事例は、お客様の声より一段長い読みものです。取材で何を聞くか、どの順番で構成するか、数字をどこまで書いてよいか、どこに置いて誰に読ませるかを、そのまま使える形でまとめました。対価と引き換えに協力を求める方法は扱いません。
この記事の要点
- 導入事例とお客様の声は別のものです。声は一言の推薦で、事例は「同じ立場の人が、どう迷って、どう決めたか」の記録です。検討中の人が読むのは後者なので、聞く内容も構成も変わります。
- 取材の質問は5つに絞ります。導入前の困りごと、他に検討したもの、決め手、使い始めの手間、いま変わったこと。この順に聞くと、話がそのまま記事の並びになります。
- 数字は、お客様が自分で把握している範囲だけを載せます。こちらで推計した効果を事例に書くと、根拠のない性能の表示になるおそれがあります。書けないときは、数字のない事実で置き換えます。
導入事例は、お客様の声とは別のもの
「お客様の声」は一言の推薦です。よかった、助かった、また頼みたい。これは背中を押す材料としては働きますが、検討の途中にいる人の疑問には答えません。
導入事例が答えるのは「自分と同じ立場の人が、何に困っていて、何と比べて、どう決めたか」です。読む人は推薦ではなく、自分のケースに当てはめられる判断の材料を探しています。
この違いは、集め方にそのまま出ます。声は入力フォームで集まりますが、事例は話を聞く時間が要ります。30分の打ち合わせを1本もらう前提で考えるほうが、結果として短く済みます。
事例にする相手は、すでに声をいただいた中から選びます。一度言葉にしてくれた人は、もう少し詳しく話すことにも応じていただけることが多く、こちらも当たりを付けやすくなります。
事例にしやすいお客様の見分け方です。
- 導入の前後で、何が変わったかを自分の言葉で話せる
- 検討の場に居合わせていた(決裁者か、決裁の資料を作った人)
- 同業の読み手にとって、規模や業種が近い
- 掲載について、社内で確認を取れる立場にいる
何を聞くか — 質問は5つに絞る
質問を増やすと、話す側の負担が増えるだけでなく、こちらが記事にまとめる手間も増えます。聞くのは5つで足ります。導入前の困りごと、他に検討したもの、決め手、使い始めの手間、いま変わったこと。
この5つは、そのまま読み手の疑問の順番になっています。だから聞いた順に並べるだけで、構成の骨組みができます。話が前後しても、あとで並べ替えれば読める形になります。
「他に検討したもの」は聞きにくい質問ですが、ここが事例の価値の中心です。比較の候補が挙がっていない事例は、読む人にとって「この会社の宣伝」にしか見えません。他社名を出せない場合は「社内で作る案もあった」「そのままにしておく案もあった」のような形に置き換えます。
「使い始めの手間」も外しません。うまくいった話だけが並ぶと、読む人は自分のときに何が起きるかを想像できなくなります。移行に2週間かかった、最初の設定でつまずいた、といった事実が入っているほうが、読み手の警戒は下がります。
そのまま読み上げて使える質問文です。
- 導入される前は、どんなことにお困りでしたか(いつ頃から、どのくらいの頻度で)
- 他に検討されたものはありましたか(社内で作る案や、そのままにする案も含めて)
- 最終的に決められた理由は、どのあたりでしたか
- 使い始めのとき、手間だったことはありましたか
- いま、導入前と比べて変わったことがあれば教えてください
どう構成するか — 4つの段落で足りる
聞いた話を、課題・検討・導入・変化の4つに並べ替えます。読む人はこの順でしか納得しないので、書く側が工夫を入れる余地はあまりありません。凝った構成にするより、探している段落にすぐたどり着けるほうが読まれます。
冒頭には、会社の規模・業種・担当の役割を3行程度で置きます。読む人が最初に確かめるのは「自分と近いか」だからです。ここが無いと、本文がどれだけよくても読み飛ばされます。
本文は、お客様の言葉をそのまま引用する部分と、こちらが説明する部分を分けます。引用には話した人の言い回しを残します。読みやすく整えすぎると、どの事例も同じ声で話しているように見えてきます。
代筆や生成AIによる作文は勧めません。誤字の修正や、社名・個人名の伏せ字化までは編集の範囲ですが、話していないことを補って書くと、事例は事実の記録ではなくなります。文章の骨組みを作るところまでにとどめます。
長さは2000字前後を目安にします。それ以上になるときは、1本に複数の話題を詰め込んでいることが多いので、事例を2本に分けたほうが読まれます。
並べる順番です。
- 導入企業の概要(規模・業種・担当の役割を3行程度)
- 課題 — 導入前に何が起きていたか
- 検討 — 他に何を見て、何を基準に比べたか
- 導入 — 使い始めるまでに何をしたか、どのくらいかかったか
- 変化 — いま何がどう変わったか(数字は次の節のとおり)
数字の扱い — 書けるものと、書けないもの
事例で扱いが難しいのは数字です。載せてよいのは、お客様が自分で把握していて、自分の言葉として話した数字だけです。「月に10時間ほど減りました」とご本人が話したなら、その言葉として載せられます。
こちらで推計した効果を事例に書くのは避けます。根拠のない効果や性能の表示は景品表示法上の問題となるおそれがあり、事例という形でも同じです。平均値や他社の実績から当てはめた数字も、その事例の数字ではありません。
数字が出てこないお客様も珍しくありません。その場合は、数字のない事実で置き換えます。「毎週金曜に集計していた作業が無くなった」「問い合わせの一次返信を担当者が抱えなくなった」のような書き方でも、読む人は自分の場合に置き換えて読めます。
数字を載せるときは、いつの時点の数字かを添えます。時間が経つと状況は変わるので、日付の無い数字は後から扱いに困ります。
数字を載せる前の確認です。
- お客様ご自身が把握している数字か(こちらの推計ではないか)
- いつの時点の数字かが書かれているか
- 条件が書かれているか(対象の範囲、比較した期間)
- 原稿の確認のときに、その数字のままでよいかを聞いたか
掲載の許諾 — 声よりも確認する範囲が広い
導入事例は、お客様の声より載せる情報が多くなります。会社名、部署、担当者のお名前と役職、業種、規模、そして本文。確認する範囲も、そのぶん広くなります。
原稿は、公開の前にお客様に読んでいただきます。話した内容と書かれた内容がずれていないか、社外に出して差し支えない表現かを、書いた側ではなく話した側に確かめてもらう工程です。ここを飛ばすと、公開後の取り下げにつながります。
同意をいただくのは、本文・お名前と役職・会社名・掲載する場所の4点です。掲載する場所には、自社サイトのほかに提案資料や展示会の配布物も含めます。紙に刷ったものは、後から差し替える手間が変わります。
お断りになったときは、そこで終わりにします。理由を聞かない、別の担当者に頼み直さない、取引の条件にしない。社内の規定で事例に出せないことは多く、断られたのは掲載の形であって、評価そのものではありません。
会社名を出せない場合は、業種と規模だけの形を用意します。「従業員50名ほどの製造業」でも、読む人は自分と近いかどうかを判断できます。
公開したあとの取り下げの窓口も、あらかじめ伝えておきます。担当者の異動や方針の変更で、後から取り下げのご依頼をいただくことがあります。
公開の前に、この順で進めます。
- 取材の前 — 事例として公開したい旨と、掲載する場所を伝える
- 取材のあと — 原稿をお送りし、事実と表現を確認していただく
- 公開の前 — 本文・お名前と役職・会社名・掲載する場所の4点に同意をいただく
- 公開のあと — 掲載した場所の一覧と、取り下げの連絡先をお渡しする
対価と引き換えに協力を求めない
割引や今後の取引条件と引き換えに事例への協力を求めることは勧めません。事業者が対価を提供して書かせた内容を、その旨を明示せずに掲載すると、景品表示法上の問題となるおそれがあります(いわゆるステマ規制。2023年10月の運用基準)。
取材にご協力いただいたお礼として謝礼をお渡しした場合は、その関係を明示する義務が生じます。金額の大小ではなく、対価があったかどうかで判断されます。
読む人にとっての価値も下がります。何かを受け取って話した事例だと分かった時点で、検討している人はその内容を割り引いて読みます。事例が働くのは、話した人に利害が無いと読めるときです。
判断に迷う内容は、載せないという選択が残っています。掲載するかどうかと、明示するかどうかの判断と責任は、掲載する側が負います。
どこに載せるか — 置き場所と、そこからの導線
事例は、1本ずつ独立したページに置きます。1ページにまとめて並べると、検索から来た人がどれを読めばよいか分からなくなり、他社に見せるときにも「この事例だけ」を渡せません。
一覧のページには、業種・規模・課題の3つで絞り込めるようにしておきます。読む人が探しているのは「自分に近い事例」なので、並べる順番より絞り込みのほうが効きます。事例が3本しかない段階では、絞り込みは要りません。
営業の場で使う導入事例と、サイトに置く導入事例は同じもので構いません。ただし掲載の同意は場所ごとに取ります。サイトには載せてよいが提案資料には使わないでほしい、という判断がありうるためです。
コエポチは、この置き場所の部分を引き受けます。スペースを1つ作ると収集リンクと掲載面が手に入り、掲載の同意は入力画面で記録として残り、承認したものだけがサイトに表示されます。事例の本文をそこに置いておけば、取り下げのご連絡があったときも表示を止める操作だけで済みます。
この記事の内容を、そのまま使える形にしています
依頼の文面はメール・チャット・対面の 3 種類を無料で公開しています。 集めたあとの置き場所(収集リンクと掲載面)は、コエポチでスペースを 1 つ作ると そのまま手に入ります。掲載の同意も入力画面で記録として残ります。
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